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岡崎乾二郎「ZERO THUMBNAIL」展 A-things

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岡崎乾二郎作品の大きな特徴として、表現主義的な絵画のストロークを分析し、それを元にストロークのフェイクを再構築して画布上に構成するという、間接的な手法が挙げられるだろう。このことは、リキテンシュタインが抽象表現主義絵画のストロークを漫画風…

山田正亮 須田悦弘 蔡國強

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画廊轍で山田正亮展。今回は、ストライプ絵画に焦点をあてた展示である。山田作品の中では、60年代初頭の約2年間程に集中して描かれた、多色ストライプの作品をもって嚆矢とするという画廊主の話を聞きながら観覧する。雪舟や等伯が中国の水墨を日本の風土…

北川裕二展 maru gallery

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会場に入ると、彩度の高い色彩がびっしりと張り付いた、小振りなサイズの作品が壁面に整然と並べられており眼を引かれる。北川氏の作品は、デカルコマニーや版画の技法などが複数組み合わされて制作されている。まず一枚目の紙に、オイルパステルによって数…

モネ大回顧展 国立新美術館

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印象派は、それまでの絵画を規定していた規範からの逸脱と、その修正の歴史であった。まずマネが既成の絵画的文法に違和を唱え、後進がそれに続いた。モネも、1868年の「ゴーディベール夫人」と題された全身像では、マネ的な方法で絵画の平板さを強調し、唐…

Lee FRIEDLANDER RETROSPECTIVE

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RATHOLE GALLERYで、リー・フリードランダーの回顧展。フリードランダーの写真には、いつも透明な視線を遮る干渉物が介在している。それは、写真によって撮られたテレビなどの映像であり、鏡であり、ショーウィンドウのガラスであり、白目を剥き、被写体らし…

柳健司展 秋山画廊

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千駄ヶ谷を歩いていると、古い民芸店を見つけた。中に入ると、現代の物で手頃な値段ながら、健康な用の美に貫かれた品が多かった。窯元が多治見にあるという陶器の小皿を一枚買った。秋山画廊で、柳健司展を見る。大胆な筆の筆触を活かし、白と黒だけで描か…

相笠昌義展

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雨の降りしきる中、ギャラリー・アニータで相笠昌義展を見る。ドーミエやゴヤばりに、縦に圧縮されたように造形された人物の群像が記憶に刻まれる。どのような人種を描いたとしても、同類と思わせる人間像の数々は、ものを見る視点とデッサンの揺るぎなさを…

ブルーノ・タウト展 ワタリウム美術館

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多方面からブルーノ・タウトの足跡を辿る展覧会。写真や模型、手紙なの資料に加え、多くの絵画やドローイングが展示されている。眼を引いたのは、タウトが自身をまずもって画家として認識していることだ。ここからは、決して建築のみが中心にあるのではなく…

須田一政写真展「子供の常景」

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日本橋のギャラリーパストレイズで、須田一政写真展「子供の常景」を見る。主に1970年代に日本各地で撮影された、子供達のスナップが並ぶ。一葉づつ丁寧に撮られた須田氏の写真は、被写体と枠(構図)との親和性が非常に高い。構図に対する意識が強いのは確…

球体写真二元論:細江英公の世界展 東京都写真美術館

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今年の年始に細江英公の写真を観に行った。異形なものや前近代的なモチーフを、過度にデザインされたフレームで捉えた細江の写真は以前から好きではなく、今回もそのことを確認しに行くだけになるかと思っていたが、展示室の一角に、ガウディの建築の外壁や…

画廊巡り

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ギャラリー小柳で小川百合展。画題はイギリスの古い図書館や、アメリカの劇場や映画館、ローマのボルゲーゼ庭園の階段など。様々な色の鉛筆を丹念に重ねることで、遠目には写真とも見紛うようなリアリティーを獲得している。近くに寄ってみると、手透きの和…

disPLACEment--「場所」の置換vol.2 倉重光則展 photographers'gallery

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美術作家の倉重光則氏は、1970年頃に野外で多くのゲリラ的な活動を行なっていた。その多くは、海に赤と青の絵具を大量に流したり、在日米軍の敷地内にある砂浜に、廃油で巨大な円相を描くといったように、ハプニング的な一回性に憑かれたものであったようだ…

アルフレッド・ウォリス展

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東京都庭園美術館で開かれている、アルフレッド・ウォリス展を観にいった。アルフレッド・ウォリス(1855-1942年)は、若い頃漁夫として船に乗り、30代前半から50代までイギリスの西南端に位置するコーンウォール地方のセント・アイヴスで船具商を商い、20歳…

ブライス・マーデン 「ムーン1(1977)」

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東京都現代美術館の常設展示室に、ブライス・マーデンの作品が展示してあるという話を聞いたので観に行った。それは「ムーン1」というタイトルが付けられた作品で、サイズは213.4×304.7cmと、かなり大きい。しかし、その大きさは、多くの凡庸な作品に見ら…

画廊巡り

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南天子画廊でコレクション展。山田正亮のボーダーをモチーフにした絵が掛かっていた。少し厚みを帯びた、渋めで様々な色彩を持つ絵具が、筆によって真横に引かれている。キャンバスは絵具で隙間無く充填されているため空間に遊びは無く、視線は上下に動くこ…

ART @ AGNES 2007

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午前中に映画を観てから午後初日の会場へ。会期が二日しかないこともあり、観客が集中している。狭いホテルの客室内に行列を作るという、悪趣味な格好となる。展示即売会という性格もあってか、展示は雑然としており、現代美術の闇市にいるような感覚だ。客…

「伊東豊雄 建築 新しいリアル」東京オペラシティアートギャラリー 

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コンピューターや建築技術の発達に伴い、複雑な構造計算や複雑な曲面を形作る施工が可能となったことで、これまでにない斬新な意匠の建築が実現されるようになってきた。伊東豊雄は、このような建築のあり方を「モダニズムを超えて自然へ向かう」という言葉…

ビル・ヴィオラ:はつゆめ 森美術館

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ビル・ヴィオラの作品は、10年位前にボストンのギャラリーでまとめて見る機会があった。その時は、『グリーティング』のような例外はあったものの、どちらかといえば、ナム・ジュン・パイクなどの影響の元に、映像メディアの可能性を実験的に問うような性向…

ドナルド・ジャッド

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平面から立体へと移行していった、多くのミニマリストの中でも、ドナルド・ジャッドは特にペインタリーな特徴を持つ作家である。彩度の高い塗料や、光で色彩を拡散させる効果のあるプレクシグラスと、色彩を反射する効果のある鈍く光るアルミニウムとの混用…

ロバート・ライマンと技術の問題

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空間がア・プリオリに与えられるとするなら、一見、絵画空間を排除するかのように、イメージを縮減された平面が、いかに物的な実在性のみを追求しようとも、イリュージョンは別の仕方によって不可避的に発生してしまうだろう。これらは、ポスト・ペインタリ…

ルイザ・ランブリ展

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ギャラリー小柳でルイザ・ランブリ展。ゆったりと間隔をおいて、静謐な印象の作品が並んでいる。白壁に空いた六角形の窓や、扉や隣の部屋など、別の空間の入口が映し込まれた大きな鏡が設えられた室内、縦横に並んだ複数の扉をランダムに開け、内側に差し込…

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認識論的に見るなら、そもそも作品の実体を固定化されたものとして捉えることは不可能である。それは、作品が可能性の束として存在することを規定する、基礎的な条件である。経験を留保した上で、「このようなものであっただろう」という作品の一般化=資料化…

パウル・クレー展 川村記念美術館

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前回大丸ミュージアム東京で開かれた展覧会よりも、質の高い作品が集まっているように思えた。展覧会の構成は、初期の風刺的で文学的な銅版画の時代、中期の実験的に造形の原理を応用した時代、後期の画面が単純化されて、造形原理が過度にキャラクタライズ…

武満徹 Visions in Time展

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武満徹の楽譜などの資料と共に、生前武満と親交があったり、武満が特に関心を示した芸術家の作品を、同時に展示した多面的な展覧会。北代省三、山口勝弘、瀧口修造など、実験工房で一緒だった面々の作品や、ジャスパー・ジョーンズ、サム・フランシス、宇佐…

リュック・タイマンス展 ワコウ・ワークス・オブ・アート

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リュック・タイマンスの作品は、ポラロイドや映像などの先行するイメージを手掛かりに描かれることが多い。描かれているものは、人物や室内、風景や植物など多岐に渡っているが、いずれも対象と映像とのズレが更にそれを絵筆で描くことによって増幅されてお…

伊藤若冲 「動植綵絵」

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皇居の大手門内にある、三の丸尚蔵館で伊藤若冲の「動植綵絵」を見た。若冲の絵は形態への意志と写生とが特異に切り結んでいるという観点から、西洋画におけるセザンヌと似た位置にあると思われた。同じ江戸時代の画家で言えば宗達や光琳、西洋ではセザンヌ…

パウル・クレー(承前)

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クレー作品の構造は、勿論タブロー全体に対する分節として捉えられるものであるが、同時に個々の小さなユニットに分割できる可能性も有している。先日の文章の中で、「空間を画面の内側に無限に織り込む」と書いたのはそのような意味を含んでいる。クレーの…

パウル・クレー展  線と色彩

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今年の2月に大丸ミュージアム・東京で開かれたパウル・クレー展を見に行った。昨年ベルン市の郊外に、レンゾ・ピアノ設計によるパウル・クレーセンターが建築され、その開館準備に伴って、所蔵作品の一部が貸与されて開催の運びとなった展示である。レンゾ・…

古谷利裕展 吉祥寺 A-things

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スクエアなロウ・キャンバスに、絵具が混入されたジェッソによって、独特の乾いた質感を持った斑点に近い色彩群が鏤められている。多くの作品で、色彩の斑点はキャンバスの中央付近を基点に配されており、これらの作品群が、はじめ、木枠に張られる前のキャ…

「杉本博司 時間の終わり」展 森美術館

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杉本博司の写真はその仕掛けの巧妙さが災いしてか、頭で理解してしまうと途端に面白味が欠けてしまう。作品を構成している、観念と物質に明確な線引きを行なうその明晰さには共感出来る部分が多いものの、杉本がもう一つの掛金とする工芸的とも言い得る完成…