2006-01-01から1年間の記事一覧

PUNCTUM TIMES 第三号

PUNCTUM TIMESの第三号(11面)に『アートと資本主義』の第三回を寄稿しました。http://www.punctum.jp/times.html 特集 熊野鈴木理策・中上健次・中上紀・吉増剛造

ビル・ヴィオラ:はつゆめ 森美術館

art

ビル・ヴィオラの作品は、10年位前にボストンのギャラリーでまとめて見る機会があった。その時は、『グリーティング』のような例外はあったものの、どちらかといえば、ナム・ジュン・パイクなどの影響の元に、映像メディアの可能性を実験的に問うような性向…

外部に置かれること

作品を展覧会会場へ搬入し終えたばかりの時は、作品を自身でも上手く認識することができない。自分がいつも制作し、周囲の環境を含めて見慣れていた場所から、外の空間へと作品の在り処が急激に変化することで、知覚が混乱しているのだ。しかし、一晩たって…

TITEN2006年12月18日(月)〜12月27日(水)すどう美術館〒104-0061 東京都中央区銀座 6-13-7 新保ビル 4Fphone 03-3547-1016時間 11:00-19:00(土日は17:00まで)初日18時より、オープニングパーティー有り。 上記グループ展に参加します。 18、23、24、…

『火の馬』セルゲイ・パラジャーノフ監督

冒頭、雪山で伐採した木が倒れ、主人公である弟を庇うようにして倒木の下敷きとなる兄を真上から捉えた映像をもって、この映画が傑作であることを確信した。ミハイル・コチュビンスキーの「忘れられた祖先の影」が原作であるこの物語は、ウクライナの山奥に…

サイズ

絵を描くためのキャンバスのサイズを少しづつ大きくしている。8号では出来なかった空間的な操作が12号のキャンバスでは実現することができる。以前人物像を描いていた時には10号のキャンバスが使い易かったが、現在の作品には向いていないように思える。この…

深夜にふる雨は糸がたれるやうに砂礫のうえで撓る

朝顔

昼夜の寒暖が激しくなったと思っていたら、あちらこちらに朝顔が咲き始めた。赤いものが多いが、今日、青い朝顔を見つけてしばらく立ち止まって見ていた。昔よりも、色彩が鮮やかになっているように感じるのは気のせいか。朝顔は染め物の色だ。絞り染めのよ…

日本画・身体

先日、歌舞伎町のバッティングセンターに行った時、一緒にいたアメリカ人の一人が打席に立つのを見て、面白いことに気付いた。フォームを見ていると、肩を丸め、身体が完全な一本の軸となり、最後まで力で振り切ろうとしている。お馴染みの大リーガーによる…

ドナルド・ジャッド

art

平面から立体へと移行していった、多くのミニマリストの中でも、ドナルド・ジャッドは特にペインタリーな特徴を持つ作家である。彩度の高い塗料や、光で色彩を拡散させる効果のあるプレクシグラスと、色彩を反射する効果のある鈍く光るアルミニウムとの混用…

ロバート・ライマンと技術の問題

art

空間がア・プリオリに与えられるとするなら、一見、絵画空間を排除するかのように、イメージを縮減された平面が、いかに物的な実在性のみを追求しようとも、イリュージョンは別の仕方によって不可避的に発生してしまうだろう。これらは、ポスト・ペインタリ…

ルイザ・ランブリ展

art

ギャラリー小柳でルイザ・ランブリ展。ゆったりと間隔をおいて、静謐な印象の作品が並んでいる。白壁に空いた六角形の窓や、扉や隣の部屋など、別の空間の入口が映し込まれた大きな鏡が設えられた室内、縦横に並んだ複数の扉をランダムに開け、内側に差し込…

展示の予定

12月の18日から27日まで、すどう美術館にて、「TITEN」というグループ展に参加します。また、来年4月17日から22日まで、大分市アートプラザにて、「零のゼロ」という展覧会に出品します。

カメラになった男 写真家 中平卓馬

シネマアートン下北沢で、「カメラになった男 写真家 中平卓馬」*1を観る。この映画は、アルコール中毒で記憶を失った後、実家のある横浜に生き、毎日写真を撮り続ける中平を記録したものである。病状はすでに回復の一途にあり、昔の写真や友人、新しく刊行…

PUNCTUM TIMES 第2号

PUNCTUM TIMESの第2号が発行されました。前回に引き続き、「アートと資本主義」という題で拙文を寄稿しています。今回は主に、美術作品の価値の形態について論じました。ギャラリーをはじめ、青山ブックセンターなどで配付しておりますので、御興味のある方…

さてヤハウェ神が言われるのに、「ご覧、人はわれわれの一人と同じように善も悪も知るようになった。今度は手を伸ばして生命の樹から取って食べて、永久に生きるようになるかもしれない」。ヤハウェ神は彼をエデンの園から追い出した。こうして人は自分が取…

教えること・学ぶこと

先日ある場所で、道理のわからない子供に対して、理屈で道理を教えることができるか、という話題になった。善悪を含めた価値判断には、ある判断に対して、比較することのできる別の判断基準を示すことが必要であり、且つその両者を俯瞰して見ることができな…

神保町

神保町へ行って、程よい行列の並ぶいもやで天丼を食べる。腹持ちが非常に良くて驚いた。新丸子のとんかつ屋を思い出すが、腹が破裂しそうで困るような感じではない。所用を済ませた後、別段欲しい本もなかったが、古本街へ。巖松堂で、三野與吉著『地學辭典…

和菓子

テレビで、伝統的な和菓子作りを過去に取材したものの、再放送をしていた。限られた素材の中から、システマティックに様々な形の菓子が出来てくる様子が面白い。餅を変形させる時の手の動かし方や、焼きごてや木型などの道具の使い方には、抑制された一定感…

漱石『こころ』

漱石の『こころ』を、はじめて読んだのは、高校の国語の授業で、夏休みの課題として指定された時だった。それまで、『猫』や『坊っちゃん』など、底抜けの明るさやユーモアを爆発させたものや、中期の三部作くらいしか知らなかったので、『こころ』が持つ重…

見えないもの

近所に通称「ゴミ屋敷」と呼ばれるタイプの家がある。生け垣などを有効に利用して、置ける限りの物が、敷地の中に積み上げられている。多くは、スーパーのビニール袋に入った、日常生活で出る「ゴミ」と思われるが、時折ちょっとしたスペースに、陶器のマグ…

蟻が、身体の三倍以上はある、コーンフレークか枯葉の欠片のような物体を、せっせと運んでいる。群れから離れてたった一匹で、何を頼りに進んでいるのかこちらは見当もつかないが、蟻の方は確かな目的意識を持っているように感じられる。アスファルトの細か…

art

認識論的に見るなら、そもそも作品の実体を固定化されたものとして捉えることは不可能である。それは、作品が可能性の束として存在することを規定する、基礎的な条件である。経験を留保した上で、「このようなものであっただろう」という作品の一般化=資料化…

下草に黄色の花落ち葉を照らす

真夜中に風鈴の音だけが鳴っている

パウル・クレー展 川村記念美術館

art

前回大丸ミュージアム東京で開かれた展覧会よりも、質の高い作品が集まっているように思えた。展覧会の構成は、初期の風刺的で文学的な銅版画の時代、中期の実験的に造形の原理を応用した時代、後期の画面が単純化されて、造形原理が過度にキャラクタライズ…

PUNCTUM TIMES 創刊号

京橋のギャラリーPUNCTUMが、季刊の新聞PUNCTUM TIMES(無料)を創刊しました。そこに、『アートと資本主義』という題で、連載エッセイを寄稿しています。 PUNCTUMの他、都内では青山ブックセンター本店・六本木店・自由が丘店、ラボEAST WEST内代官山フォト…

『愛より強い旅』 トニー・ガトリフ監督

久々に見るロードムービーらしいロードムービー。自身の音楽に行き詰まった主人公が、自らの出自を求めて、恋人と共に、パリからアンダルシア、モロッコを経て、アルジェリアへと向う。貧乏旅行に加え、天性の非常識さが、二人の珍道中に拍車をかけている。…

人間の犯した罪は、奇跡的な一回性によってのみ、赦されるのでなければならない。罪人の懺悔に伴い、赦す側に互酬的な感情が発生することを前提とするならば、可能世界において、そのような赦しが先取りされるという事態が起こり得るからである。赦しが一回…

武満徹 Visions in Time展

art

武満徹の楽譜などの資料と共に、生前武満と親交があったり、武満が特に関心を示した芸術家の作品を、同時に展示した多面的な展覧会。北代省三、山口勝弘、瀧口修造など、実験工房で一緒だった面々の作品や、ジャスパー・ジョーンズ、サム・フランシス、宇佐…