2005-01-01から1年間の記事一覧

絵画の地について

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古谷利裕氏がホームページの05/12/21(水)の記事中で、ここ数日間の一連の考察の参考文献のひとつとして、岡崎乾二郎氏が松浦寿夫展の図録のために書いた文章を紹介しているのだが、これが面白い。制作過程を料理に例えた*1その文章は、手の動き(料理をする…

パパ・タラフマラ 『HERT of GOLD-百年の孤独』 世田谷パブリックシアター

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パパ・タラフマラによる、ガルシア・マルケスの原作を劇化した舞台。ダンス、歌、演劇、映像、ラップなど、マルチメディアを駆使した演出は、以前の『ストリート・オブ・クロコダイル』以来の傾向で、これは渾沌としたマルケスの原作を表現する上では有効な…

ヨハネス・イッテン 造形芸術への道

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ヨハネス・イッテン(1888-1967)の活動を俯瞰してみる時、まず目につくのは、色彩と造形と教育がしっかりと切り結んだ、その特異性だろう。イッテンにとっては、そのうちのどれか一つが欠けることも許されなかった。イッテンの美術思想の根柢にあるのはコン…

法にかかる政治的バイアス

自衛隊のイラク派遣に反対するビラを、立川の自衛隊官舎で配っていた市民団体の運動員が住居侵入罪に問われていた裁判で、東京高裁は1審の無罪判決を棄却し、逆転有罪判決を下した。http://www.chugoku-np.co.jp/NewsPack/CN2005120901001417_Detail.html他…

価値について

金価格の上昇につられて、銅先物の価格も上昇を続けている。http://www.futuresource.com/charts/charts.jsp?s=RHG1%21&o=&a=D&z=800x550&d=medium&b=CANDLE&st=これは、我々の財布の中にある、10円玉の価値も上昇し続けていることを意味する。しかし、10円…

Book Covers展への批評

開催中のBook Covers展に関して、友人がとても丁寧な批評を書いてくれた。 たいへんありがたいことだ。 彼は、その批評家的資質の高さに加え、若き日の私の学習プロセスの一端を知っていることもあり、私が最も怖れる批評家である。 ぜひ、記事を読んで、展…

The Book Covers

『ブック・カバーズ』という展覧会に出品します。 本の装丁をテーマにした展覧会です。 御高覧ください。 11月15日(火)−11月27日(日) 2005 12:00-19:00 (最終日16:00終了 Final day closed at 16:00) 休廊日:11月21日(月) http://www.punctum.jp/th…

岡崎乾二郎展 南天子画廊

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岡崎乾二郎の作品を見るのには時間がかかる。絵画面を構成する絵具の塊が不定形な姿をしているために、ヒトが形態を認識する際の機能が上手く心像を結ぶことを阻むからだ。それは、ヒトが未知の言語を前にした時の反応に似ている。アラビア語の意味と構造を…

毛沢東の書

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写真は毛沢東の書である。 鞭がしなるような独特の書体は狂草と呼ばれ、草書が発展したものだ。 これを物するためには荒ぶる筆の揺らぎを統御しなければならず、習得は難を極めるらしい。毛沢東の書を眺めていると、老子が残したエピソードを思い出す。 ある…

フーガの技法

描かれた絵画素材を一枚一枚撮影するという気の遠くなるような作業を経て驚くべきアブストラクトアニメーションが誕生した。闇の中に浮かぶ白い矩形が、バッハの「フーガの技法」に合わせて大きさが変わり、回転する。これが通奏低音の役割を果たす。その周…

「歴史の歴史」杉本博司展  

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歴史は過去を意味しない。時間の記録が原理的に不可能である限り、それは物質に刻まれた無数の出来事の断片を、現在性において再構成することでしか見えてこない。歴史家は、無時間的な闇に堆積した出来事の地層に、作為をもって介入し、個々の出来事に照射…

グローバリゼーションについて

資生堂ワードフライデイ*1。対話者は新元良一と池内恵。題はグローバリゼーションであったが、話は主に新元氏が池内氏にイスラム社会の特殊性について尋ねる形式で進められた。イスラム社会においては、神は絶対的な存在として書物(コーラン)を人間に下し…

ドッグヴィル

アメリカの閉ざされた貧しい村、「ドッグヴィル」に偶然一人の女(ニコール・キッドマン)が迷い込み、その女が引き金となって村が破滅するまでを追ったストーリー。舞台はスタジオの中空に架構され、家や道路が白線で示された一枚の床だけだ。9つに章立て…

小選挙区制というレミング

11日は午後から投票に出かけた。会場はいつになく長蛇の列が出来ていた。嫌な予感はしたが、蓋を開けてみれば殆どは自民党に投票しに来た人々であったようだ。小泉の郵政一本槍のメディア戦略の前では、自民・民主どちらが政権を取ったとしても憲法改正へと…

虫の声

夜道を歩いて家に近づくと、徐々に虫の音が聞こえてくる。遠くから緩やかな一定のリズムで鳴くものや、無数のごく短い響きでユニットを構成した音色を、金網を金属棒でこするようにばらまくもの、死にかけた蝉が地面に接したまま最後の羽ばたきを低く響かせ…

中平卓馬展 原点復帰-横浜

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副題を「原点復帰」と題されたこの展覧会は、近年主にジャーナリズムにおいて「再発見」され続けている中平卓馬の仕事の全体を非常にコンパクトにまとめており、なかば神話化されていた氏の作品を時系列的に確認することができる。中でも最も注目すべきはカ…

鬼塚良昭展

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日曜日に、中野の土日画廊で開催中の鬼塚良昭展-日々移ろう時空-を見に行った。鬼塚さんは、齢70になる宮崎在住の彫刻家だ。会場にいらっしゃった作家は年を重ねてますます意気軒高であり、頼もしい限りである。作品は素材に木材や石材を主に使っており、ど…

恐い、怖い、こわい展

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ブリヂストン美術館が所蔵する作品の中から「恐怖」をテーマとする46点で構成される展覧会。全体を3つのパートに分け、美術における恐さという問題をあぶりだす。「死と悪魔」(1)では、人間が死という最も原初的な恐れの感情に、いかに対処して来たか…

ブラウン・バニー

ヴィンセント・ギャロは『ブラウン・バニー』によって新たなる映像の極北を走破してみせた。モーターサイクルの250CCフォーミュラ−レーサーが、忘れられない過去の愛を探しにアメリカ大陸横断の旅に出る。こうした絶望的な設定のなか、ギャロに許されてい…

雨、向田邦子、小津安二郎

日暮れ時に夕立ちが降る。夕立ちは大粒の雨が身体に垂直に切り込んでくることが多く、確かな重みのある雨水の冷たさが印象的である。人工的にコントロールされない水というものの生々しさをふいに感じ、風や雨や寒さに対して常に無防備であった子供時代を思…

10話

アッバス・キアロスタミの新作は「対話仕立てのインタビュ−スタイル」とでも言えそうな映画の新しい形式を作り上げている。一人の女性がテヘランの街を自動車で走り続ける。助手席には、母親の新しい恋人に馴染めない息子が、信心深い老女が、失恋に取り乱す…

家宝

94歳になった今も、年一本という驚異的なペースで新作を発表し続けるポルトガルの巨匠、マノエル・ド・オリヴェイラ監督の新作映画。莫大な遺産を相続した一人の青年の前に二人の女が現れる。典型的な悪女、ヴァネッサと純真な女性、カミ−ラ。周囲の計算通り…

絵画の見かた

『絵画の見かた』ケネス・クラーク(著)高階秀爾(訳)ケネス・クラークは生前、ロンドンのナショナルギャラリーの館長を務めていたことがあった。美術館は氏の著書で扱われる作品のように、あるコンテクストを元に集められた質の高い絵画群が、整然と並べ…

鏡の女たち

http://www.groove.jp/movies/mirror/冒頭からしてただごとではない。門から出て来た一人の女性が白い日傘で顔を隠し、バス停への通りを行く。それを一台の車が静かに追うサスペンス。巧妙な寄りと引きが畳み込むように観客を映画へと引き込んでゆく。そして…

宇野亜喜良展

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60年代から70年代にかけて一世を風靡したイラストレーター、宇野亜喜良の回顧展。2つの会場を使って初期のポスターから近年盛んに手掛ける舞台美術までを通覧する。繊細な筆致で描かれた線や、中間色が鮮やかな独特の色彩、鋭敏な構成感覚に貫かれたコラ…

ファブリカ展

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コミュニケーション・リサーチセンターと銘打って、ベネトンが世界中の25才以下のアーティストを集めて次世代のヴィジュアルアイディアを探るために設立されたデザイン機関「ファブリカ」。この展覧会は、その10年間に渡るワークショップの集大成。生傷…

束芋展

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今年3月の東京オペラシティーアートギャラリー(+エイヤ=リーサ・アハティラ)、7月からのKPOキリンプラザ大坂(+できやよい)、ハラミュージアムアークでの作品発表に続いて、ギャラリー小柳でも束芋の個展が行われている。(銀座のギャラリーでは映像…

臨床読書日記

『臨床読書日記』養老孟司(著)今書名を見ると、どこかのブログのタイトルのようにも見えるが、90年代に破竹の勢いでジャーナリズムを賑わしていた当時の、養老孟司の書評集である。養老氏によると、タイトルの「臨床」とは、「個々の患者さん*1に教科書的…

米田知子展

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資生堂ギャラリーで開かれている、ロンドン在住の写真家、米田知子の個展。近年、現代美術の文脈で語られることの多い日本の写真家の中でも米田は杉本博司などと共に、方法意識の強い作家の一人である。取り壊される寸前の家の、古びたり、ヒーターの熱でう…

2005アートフェア東京

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http://www.artfairtokyo.com/2005年の8月に有楽町の東京国際フォーラムで開催された、アートフェア東京にも米田知子の作品が出品されていた。作品は、戦争跡地を撮影した風景シリーズが主であったと記憶しているが、新たな感慨はない。 それよりも、多くの…