ルイザ・ランブリ展

ギャラリー小柳でルイザ・ランブリ展。ゆったりと間隔をおいて、静謐な印象の作品が並んでいる。白壁に空いた六角形の窓や、扉や隣の部屋など、別の空間の入口が映し込まれた大きな鏡が設えられた室内、縦横に並んだ複数の扉をランダムに開け、内側に差し込む外光を暗闇の室内から撮影したものなど、作品の殆どは矩形に準じた建築の一部分が切り取られるように撮影された写真である。光の反射が巧妙にコントロールされていることや、無彩色の空間をカラーフィルムで撮影していることによって光のヴェールが画面に引かれたような効果を写真にもたらし、空間自体が自ら発光しているかのような感覚を生じさせている。この、自ら発光するという隠された主題は、撮影される対象の選び方からして、作家によって意識的に追求されているようだ。白壁に投射された太陽の光は、透明な窓ガラスの表面の表情を微妙に変化させる。被写体の外側の空間が鏡に映し込まれることで、鏡のこちら側と向こう側との間に光の明度差による対照を作り出す。暗闇に隙間から射し入る光は、空間内に無限の階調によるグレースケールを作り出し、室外における射すような光の暴力を暗示させる。テクニカルにも見えるこのような操作は、しかし「原初の光」というような物語性の隠喩に過ぎないとも言えるだろう。現代美術という閉塞的なジャンルが、言葉によって語り得るものと定義されるとすれば、これらの作品もそこから抜け出してはいない。