2007-11-01から1ヶ月間の記事一覧

迎えに来る

部屋の窓が、隣家の庭の一角に面している。窓枠は丁度、その庭に生えた柿の木を切り取っており、その向こうには遠くの団地が空の下に聳えている。今年もその柿の木には多くの実がなったのだが、それらの実は例年通り今も収穫されずに残されている。そうこう…

ヴァレリー・アファナシエフ

art

神奈川県民ホールで、ヴァレリー・アファナシエフのピアノリサイタルを聴く。プログラム前半のどこまでも繊細で優美なワルツと、後半の力強いポロネーズが対比される。曲調がどれほど異なろうとも、アファナシエフがピアノへ向かう不動の姿勢は変わらない。…

塩田千春

横浜の神奈川県民ホールで塩田千春展を観る。塩田はドイツ在住の作家である。巨大な建築物に毛糸を張り巡らせたり、ピアノを焼き焦がすインスタレーションで知られている。同じドイツということで、ついボイスやキーファーやりヒターを連想してしまうが、実…

埴谷雄高『死霊』展

去る嵐の日に、神奈川近代文学館へ「無限大の宇宙 埴谷雄高『死霊』展」を観にいった。原稿やメモ、書簡から身の回りの品々を通して『死霊』が書かれた背景を探る展示である。天井から吊り下げられていた、幾何学的で清澄なデザインの般若家の家紋に驚かされ…

死と眠り

政治事件によって逮捕され、死刑判決を受けたドストエフスキーは、刑場で銃殺刑に処される寸前になって、皇帝による恩赦を受け、開放される。その瞬間のドストエフスキーは、いったいどのような「状態」にあったのか。一切のものを食べず、空腹に喘ぐ最中で…