相笠昌義展

雨の降りしきる中、ギャラリー・アニータで相笠昌義展を見る。ドーミエゴヤばりに、縦に圧縮されたように造形された人物の群像が記憶に刻まれる。どのような人種を描いたとしても、同類と思わせる人間像の数々は、ものを見る視点とデッサンの揺るぎなさを示している。安定した筆触やマチエールの中で、不意に訪れる沈黙の為の居場所。マグリットの絵の面白さが、アクロバティックな画題のみにあるのではないのと同じように、相笠氏の作品も、周到に計算された空間の取り方、辛抱強い構成の妙が「絵を作る」という行為の秘密を浮かび上がらせてゆく。セザンヌが感覚の直接性をキャンバス上での出来事として組織してゆくタイプであるとすれば、スーラは間接的に物質としての画面を形作ってゆくタイプであると分類できるように、絵画には二通りのあり方が存在し、どちらが真であるとは言い切る事が出来ない*1。そのような反省を促すという意味でも相笠氏の絵を見る事ができて良かったと思う。


相笠昌義展は4月29日(日)まで(木曜休廊)
ギャラリー・アニータ
座間市入谷4-1869-5 tel 0462-54-4833
小田急線座間駅を出て、坂を上がる方へ向かって徒歩2分

*1:無論、相笠氏の絵は後者だろう。