ゴダールの新作、『アワーミュージック』

ゴダールの新作、『アワーミュージック』は切り返しショットを通して、ユダヤイスラムの非対称性を明確にし、対立の構図を浮き彫りにするような映画だそうだ。ゴダールは、昔とった態度を変化させて、パゾリーニの映画を再評価しているようだが、それはこのような、映画の文法とその政治的な効果を再考するような傾向からも伺える。ゴダールの「映画的なもの」への回帰から、日本の蓮實スクールが総じてこの作品を絶賛していることは無視するとしても、メディアの領域を越えて、手法に意識的にならざるを得ない状況が到来していることは、素直に歓迎すべきことだ。

映画サイトのインタビューを見ても、昔は「キャメスコップ」さえあれば、映画などすぐにでも撮れるのに、若い人が伝統的なフィルムで撮りたがるのは何故か?と発言していたのに、今回はデジタルビデオカメラの操作法を覚えたからといって、映画が撮れるというわけではないと、意見を180度変えていたことが印象的だった。

まず自分の一日を撮ってみるといい。するとどれだけ自分が映画を撮れないかわかるでしょう。そういう人はすぐに映画をやめて別のことをしたほうがいい。でもそこでやめない人が多すぎるのです。理由はわかりませんが。映画の中で私は学生に「デジタルカメラは映画を救うことができるか」と質問されて、何も答えない。シナリオ段階では「まず自分の一日を撮影してみなさい」と、さきほどお話ししたのと同じことを答えようかと思っていたのですが、いろいろ考えて、結局、沈黙のほうを選びました。

http://www.godard.jp/

ゴダール/映画史〈1〉

ゴダール/映画史〈1〉