消費税

 経団連が政府に対して、消費税を10%に値上げすることを要望する方向で最終調整に入ったと、マスコミ各社が報じている。経団連に属する大手の輸出企業は、輸出品に関して消費税が掛からないのに加え、輸出品の仕入れに掛かった消費税すらも還付される仕組みになっている。その額は輸出企業上位10社だけでも年間6000億円を超えている。

 高度経済成長期における日本経済自体が、海外への輸出によって潤ってきたというのは事実であるから、消費税免税が輸出を奨励するための助成金の意味を持っているという理屈は理解できなくもない。しかし、現在のように経済が成熟期を迎え、巨大企業が潤いながらも中小企業が淘汰されるというような、国内経済における景気の不均衡化がもたらされる状況を見ると、このような制度は富者をますます富ませ、貧者をますます貧しくさせることに加担しているように見えてくる。

 輸出ばかりが好調な一方で、消費税の増税によって内需の冷え込みが更に助長されるなら国内経済の問題もより深刻さを増すだろう。原油や金、穀物などの原料価格が上昇し、インフレ傾向が鮮明となる中で、内需に目を向けると、大手の食料品販売企業でさえも、安売り店業態への舵取りを余儀なくされていることなどが目に付いてくる。輸出と内需との間の景気的断絶は進行してゆく。

 私の個人的観察によれば、消費者の動向というのは景気の先行きに関する動きを鋭く反映している。金の価格が上昇に転じ始めた4,5年前、偶然女性向けの雑誌で、ゴールドを取り入れたファッションが提案されているのを見たことがある*1。現在の家庭菜園ブームは、ひょっとすると一次産品価格(特に食料品)の更なる上昇を暗示しているのかもしれない。

*1: その後2,3年のうちに金の価格が上昇を続けてゆくのに従って、ファッションにおけるゴールドの市民権も比例して認められてゆき、電気店などで金色の携帯電話などもみかけるようになっていった。ファッションとは直接に関係しないが、最近では中村一美の個展において、大量の金色の絵具を使用した作品を観たことが記憶に新しい。1973年から2007年までのロンドン金価格推移を見てみると、1980年に1トロイオンスあたり850ドルの高値をつけていることがわかる。現在手元に資料がないので何とも言えないが、1980年前後の風俗を調べてみると何らかの関連性が見つかるかもしれない。http://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/y-gold.php