日本民藝館、柳邸、スリップウェア

駒場日本民藝館に行くと、偶然本館の向いにある柳邸の修復披露を行なっていた。いつになく人の入りが多い。柳宗悦自身が設計したというこの家は、和洋折衷様式で建てられており、本館同様基礎部分の石と木造との対比が印象的である。内部空間においても洋式の応接間の隣に、舞台のように一段高く設えた和室や、和風の縁側に対して芝生の庭が鮮やかな対比を見せるなど、東西を問わず美の根元は同じという柳の思想が反映されているかのような作りとなっているように思われた。二階に上がると、三畳程の小部屋の窓からは鈍色の瓦屋根が一面に切り取られて見える。書斎も意外に小ぶりである。蔵書には仏教関連の本が多くあるが、ベルグソン『思想と動くもの』が眼に入って来る。

本館の展示は「柳宗悦の蒐集」と題して、柳が発見・再評価した古美術が主に展示されていた。内容は琉球の紅型、李朝の民画に白磁、木喰仏、大津絵など。英国のスリップウェアや同じく英国の13世紀頃の陶器の水差しなどに見るべきものが多かった。並べて見ると、濱田庄司の掛流しの技法に対するスリップウェアからの影響は明白であるが、濱田の掛流しがポロックのように外側に広がって行くような軌跡を見せるのに対して、スリップウェアの方は陶器の内部空間において縦横に線が伸縮し、紋章的な纏まりを見せているように見えた。

柳の本の装釘や書の表装を見ていると、特殊から普遍へという考え方が濃厚に感じられる。このことは、河井寛次郎の作る異形を理解する上でも重要であると思う。

『民藝四十年』柳宗悦著