山口昌男が亡くなった。最近、『二十世紀の知的冒険』というタイトルの対談集を読んだばかりだった。ヤコブソンやレヴィ=ストロースなどの超一流の学者やシルヴァーマンのような先鋭な音楽家と対談をさせたら右に出る者はいないと思える程、素晴らしいものだった。特にヤコブソンとの対談において、エイゼンシュタインバスター・キートンを激賞していたのが印象的だった。山口昌男によれば、キートンは身振りだけで宇宙的次元を獲得している。チャップリンはその境地に達していないとして、キートンとの差異を強調する。キートンの作品は神話そのものであると。いま、このような次元で芸術を思考する者がどれだけいるだろうか。