展覧会に寄せて


 経験の更新


 技術は、社会における生産体制に規定されている。新しく生まれる技術の体系もあれば、滅びてしまう体系もある。歴史の蓄積は、過去の作品に魅了されることを画家に許すが、歴史は不可逆的に進展し続ける。その時、いま絵を描こうとする私は、奇妙な矛盾に突き当たるのだ。過去の作品から受け取った絵画の教えを、いま実現することの不可能性に。それは、狡猾にも、二重に阻まれている。歴史の進展と、技術の忘却とによって。画家はその時、二重に抵抗せざるを得ない。時間に流されることと、過去への模倣に対して。

 画家が行わなければならないのは、生得的ではない技術を、にもかかわらず(更に)新しき経験の只中において押し広げることである。経験を更新することとは、ある確信に基づきながら、理解を絶することである。


2011年2月 

上田和彦