展示タイトル案について

 部屋を整理していたら、昨年A-thingsで行った展示のタイトル案が出てきた。当時は公開するつもりはなかったが、昨年の展示が過去のものとなり、自分の中に展示を再考するための空間が生まれたことと、タイトル案を再読して、現在にもつながる問題意識が見られたので、ここに記録することにした。

タイトル案 Investiture Controversy(叙任権闘争

 叙任権闘争とは、「11世紀から12世紀にかけて、帝権と教権および高位聖職者の叙任権をめぐり神聖ローマ皇帝ローマ教皇との間で行われた争いを指す」(平凡社世界大百科事典)。制作において、明晰に意識可能なものとして把握されている形式と、意識によっては制御することのできない神経的な動作との間の戦いを、この言葉になぞらえている。叙任権闘争は、結果として政教分離をもたらした。これは、芸術における形式主義の台頭に喩えることができるかもしれないが、分離から闘争の只中へと再び遡行することによって、形式に対する内容の問題、シュルレアリスムに端を発する自動筆記が生み出した地平について、批判的に再検討してみたい。(上田和彦)