危険な内向き経済

 米下院が景気対策の一環として、米国製鉄鋼の購入を義務付ける「バイ・アメリカ」鉄鋼条項を承認した。

 景気悪化を理由にアメリカ経済が内向きになることは非常に危険である。

 1929年に端を発した恐慌時においても、まず金本位制が放棄され自由貿易が成立しなくなった。そして、各国はそれぞれの植民地を抱え込み、ブロック経済体制が敷かれた。結果として、世界経済の効率性が著しく阻害され、資源争奪が熾烈となり、世界大戦へと突入した。

 [ワシントン 28日 ロイター] 米下院は28日、リセッションに陥った経済を立て直すための8250億ドルの景気対策法案の一環として、米国製鉄鋼の購入を義務付ける「バイ・アメリカ」鉄鋼条項を承認した。
 賛否両論あった同条項は、景気対策法案に基づき資金を供給される公共事業で使用される鉄と鉄鋼は米国製のみ容認される、としている。
 米商工会議所や他の経済団体は、これを例に他国が同様の経済対策を検討する可能性があるとして、同条項の導入に反対していた。
 全米鉄鋼労働組合(USW)のレオ・ジェラルド代表は「米国の製造業は深刻な打撃を受けており、経済で愛国心を発揮する時期だろう」と述べた。
 同法案は幹線道路や鉄道、その他のインフラ計画に約900億ドルを配分している。
 「バイ・アメリカ」鉄鋼条項は、空港や橋梁、運河、ダム、堤防、パイプライン、鉄道、公共輸送システム、道路、トンネル、港湾、桟橋などを適用範囲とする。
 米下院歳出委員会は今月、同条項を賛成55票、反対ゼロ票で可決した。