郵政民営化法案否決

郵政民営化法案が参院で否決された。小泉・竹中コンビの進める郵貯外資への売り渡しを、反対派が自身の政治生命を賭けて死守した形となった。アメリカには国家戦略というものがあり、日本にはそれがない。アメリカは国家戦略を理念のレベルで押し進め、日本の郵貯を取りに来ている訳であり、自身の戦略なく、アメリカ追従が至上命令となっている小泉政権が、磐石の体制で法案を可決するには無理があったということだろう。民営化に伴う明確な国益を国民に提示することなく、法案の早期可決ををアメリカに促されるままに、押し進めたツケが回って来たとも言えるかもしれない。しかし、反対派も長期政権となった小泉体制の元で、相当基盤を切り崩されており、自民党公認なしで勝利することは難しいだろう。

国民にとっては、今度の選挙は自分達自身がが市場で生きる覚悟があるのかないのかを、問われる選挙となる。これを機会に、米国資本と本格的に対決する覚悟を決めるのも良いだろうし、従来の利権に最後までぶら下がる生き方をあくまで貫くのも良いだろう。ただ、後者を選ぶとすれば、それは、拡大を続ける世界金融資本主義を横目に浜辺を日々削り取られる孤島で生活するも同然との覚悟を決めることに他ならない。

今回の政局を眺めていて、旧約聖書にある、故郷へ帰る途中に後に神と知る男とレスリングで死闘を繰り広げるヤコブのことが思い浮かんだ。ヤコブは顔を見ると死ぬと言われていた神と勇敢に戦い、その神に祝福された後、指示に従い「イスラエル」を名乗った。現在の日本人は資本という顔=他者を凝視することを迫られており、それは国家という体制を維持出来るかどうかに関わっているのである。