小鍛冶白頭

 NHK古典芸能への招待、宝生流能楽「小鍛冶」(白頭)は圧巻だった。帝の勅使による命で劔を打つことになった小鍛冶だが、自らの技量に沿うような相槌がいない。稲荷明神で祈りを捧げ、相槌を所望すると、どこからともなく童子が現れる。童子は小鍛冶を励まし、劔を打つ時には、必ず助けになると約束して稲荷山へと去ってゆく。ついに劔を打つ日がやってくる。小鍛冶が劔を打とうとすると、稲荷明神の化身が狐の精霊となって現れ、見事な腕さばきで小鍛冶の相槌を務め終える。劔の表に「小鍛冶宗近」と銘を彫ると、裏には「小狐」の銘が刻まれていた。明神は名劔「小狐丸」を勅使に捧げると、雲に乗ってたちまちの内に稲荷の峯へと帰って行った。小鍛冶の苦悩から神への祈り、明神の化身による救済への流れが非常にスピーディーで、かつ謡と曲とが心地よいリズムを添えている。息つく暇もなく見入った次第。