川村記念美術館での中西夏之展は、松濤美術館での個展の時よりも作品の弛緩がより目立っていた。今では、90年代の終わり頃に開催された現代美術館での個展がひとつのピークだったという見方をしている。かつては、弓型のサインカーブを孕んだ垂直軸が作品の構造を支えていた部分があったが、現在の作品からはそうした仕掛けが失われ、筆触の水平的な配置の論理だけが画面上で探られているように見える。長尺の筆による、力や絵具の量的配分が、ある適切さを超えた領域において、エロティックな画面上での戯れを感じさせる場面はあるものの、しかしそれが作品の質を全的に担保するものには、もはやなり得ていないように思われた。