淡路町の家

 西片建築設計事務所の小野弘人氏より、ご自身が設計に関わられた「淡路町の家」の写真が掲載された平成建設HPをお教え頂いた。撮影は山岸剛氏。

http://www.heiseikensetsu.co.jp/photo21_1.html

 通りに面したファサードの写真を見ると、この建築の設計が非常に狭い敷地に建てるという条件によって要請されていることがわかる。互いに張り合わされるように施工された、外壁に使われた建材が剥き出しになっており、その簡素な壁面上に、アイコン化された窓と窓枠が強い印象を持たせている。敷地の狭さを逆手に取った、効果的な措置である。加えて、傾斜した地面に細長い建築が建っていることで、建築の垂直性が強調されている。

 内部空間を見ると、外壁と同様簡素な素材が使われているものの、狭い空間内に日光を効率的に受け入れるための傾斜がつけられた壁面と、差し込んでくる光を柔らかく受け止めるヴォールト状の天井の形態との組み合わせが豊かな空間を生み出しており、オーソドックスな家具とも美しく調和している。

 特筆すべきは、壁面に対して比率を精緻に計算された入り口や窓などの開口部で、その意思的な矩形は土製の家屋に開けられた入り口のようにも、また洞窟に開いた穴のようにも見える。この開口部の存在が、表からも内部からも、建築自体を可塑的なマテリアルとして感知させるきっかけのようなものとして機能しているのである。

 写真を見て、実際に体験してみたいと思わせる建築である。