BATTLEFIELD『マハーバーラタ』より-戦い終わった戦場で-

 新国立劇場で、ピーター・ブルック演出のBATTLEFIELDマハーバーラタ』より-戦い終わった戦場で-を観た。

 戦争、殺戮、贖罪、生命の円環。

 基底音たる太鼓の響き(時間の表象であると共に目前に広がるガンガの流れが彷彿として浮かび上がる)と役者の身体・身に着けた幾枚かの布によって、死の運命を司る小さき蛇から、少年の体内に広がる入れ子状の宇宙までを雄弁に描いている。

 よく練られた脚本と、よく訓練された身体・発声があれば、いかなる舞台装置よりもイメージを喚起させうる(的確に計算されたライティングが脇を固めているのは当然として)。演劇の王道。しかし、時間の先端においてこれを達成し続けることの苛烈さが偲ばれる。


[art]ミホミュージアム訪問―コレクション展から見えるもの

バーネット・ニューマン展について、永瀬恭一さん、三松幸雄さんと共に収録した音声の続編です。

1. コレクションと建築

2. 知性の形について

http://d.hatena.ne.jp/eyck/20150908

ミホミュージアム訪問―バーネット・ニューマン 特異点としての《十字架の道行き》

 画家の永瀬恭一さんと、芸術学の三松幸雄さんと共に、MIHO MUSEUMで行われた「バーネット・ニューマン 十字架の道行」展についての対話を収録しました。

 詳細については、下記ブログの記事をご参照ください。

http://d.hatena.ne.jp/eyck/20150821

 箱根の岡田美術館で8月末まで公開されている、歌麿の《深川の雪》は必見だが、北斎の肉筆春画も公開されており、これが素晴らしかった。春画の定型的なモチーフ、構図を踏襲しながらも卑猥さが全く感じられない。春画を正真正銘の芸術へと高めている。同美術館所蔵の尾形乾山《色絵竜田川文透彫反鉢》が重文に指定されたとのことで公開されていたが、これも透かし彫られた陶土と釉薬の物質感が濃厚に感じられ、彫刻的な造形とも相まって素晴らしいものだった。将来国宝に指定されてもおかしくない作品だ。

 ポーラ美術館のセザンヌ展は、大涌谷の火山活動の活発化により、他館より借り受けた作品は返却されており、同館所蔵の9点のみの公開であったが、それでも十分に見応えはあった。特に静物画(構想画を含む)はどれも質が高く、セザンヌ初期の神秘主義的な作品も貴重だ。また、モンティセリやマネ、ルノワールとの関係性にも焦点が当てられた展示となっており、様々な発見があった。