箱根の岡田美術館で8月末まで公開されている、歌麿の《深川の雪》は必見だが、北斎の肉筆春画も公開されており、これが素晴らしかった。春画の定型的なモチーフ、構図を踏襲しながらも卑猥さが全く感じられない。春画を正真正銘の芸術へと高めている。同美術館所蔵の尾形乾山《色絵竜田川文透彫反鉢》が重文に指定されたとのことで公開されていたが、これも透かし彫られた陶土と釉薬の物質感が濃厚に感じられ、彫刻的な造形とも相まって素晴らしいものだった。将来国宝に指定されてもおかしくない作品だ。

 ポーラ美術館のセザンヌ展は、大涌谷の火山活動の活発化により、他館より借り受けた作品は返却されており、同館所蔵の9点のみの公開であったが、それでも十分に見応えはあった。特に静物画(構想画を含む)はどれも質が高く、セザンヌ初期の神秘主義的な作品も貴重だ。また、モンティセリやマネ、ルノワールとの関係性にも焦点が当てられた展示となっており、様々な発見があった。