多忙のため行けていなかったが、終了間際の「セザンヌ パリとプロヴァンス」展と「レオナルド・ダヴィンチ 美の理想」展を一挙に観た。セザンヌ展は、出品作品数の多さに加えて、パリとプロヴァンスを往復するセザンヌというコンセプトが利いていた。鈍色に光るパリ時代の静物と南仏の明るい光を彷彿とさせる静物との対比、そして晩年に描かれた「5人の水浴の男たち」は、木々と人物とが重なり合い乾いた空気の中で燃え上がるかのようだ。セザンヌを巡る様々な未解決の問題について、考えながら観て回ることができた。

 ダヴィンチの方は、「衣紋の習作」数点と「ほつれ髪の女」、ペンによる極小の素描さえ観れば十分だ。展覧会は、工房制作の重要性を強調し、同時代の絵画や文物の紹介に熱心ではあったが、真筆と工房作や模写との間には深い谷が穿たれている。求心的なダヴィンチと分裂を孕んだセザンヌとの間にある芸術性の差異について意識させられた。