芸術の価値形態

 昨日から「組立」上田和彦×永瀬恭一展が始まっています。会場でフリーペーパーを発行しておりますが、そこに『芸術の価値形態』というテキストを書いています。「アートと資本主義」の続編的な性格を持ったものですが、前回よりも美術作品が持つ内在的な論理に、より照準を合わせています。私が『資本論』に惹かれる理由の一つに、資本の運動が持つ本質を、論理の力によって内在的に解明している点がありますが、フォーマリズム批評が目指したことのひとつも、美術作品がもつ内在的な論理の解明にありました。(テキストの中では批判的に言及してはいるものの)そこには、現象への追随へと陥りがちなポストモダン批評にはない、確認すべき可能性の富がいまだ内蔵されているように思います。

 他に、外部から寄稿してくださった上山和樹氏の『コスプレへの監禁ではなく、素材化の自由を』、永瀬恭一氏の『言語の爆発的失敗 東浩紀から吉本隆明「マス・イメージ論」への遡行』が掲載されています。上山氏の論考は、「ひきこもり」に関する研究を基礎においたテキストですが、そのまま作家や観客をも含んだ美術というジャンルへの批判としても読むことが出来ます。広く開かれたテキストであると思います。

 展覧会共々、よろしくお願い致します。