『家庭』

フランソワ・トリュフォー監督の『家庭 (1970)』を10年ぶりくらいに見返す。今改めて見ると、初見の頃に多少なりとも意識された「物語性の解体」や「音と映像との分離」などの教科書的なヌーヴェル・ヴァーグ観というものはそれほど意識されずに、むしろチャップリンなどにも通ずる古典的様式を備えた作品という印象を強く持った。作品にコメディ色が強いことも幾分作用しているだろうか。この時期の作品においては、内的形式の面でゴダールとの共闘*1も依然成立しているようだ。軽快なストーリーとは裏腹に映画の根底には、そこはかとなくスパイスとしての政治性すら漂っている。

『家庭』ジャン=ピエール・レオー主演

*1:万事快調(1972)など