西村賢太「陋劣夜曲」(『群像』1月号)

希望無き生の心理、内実を異様なまでに細かなディティールをもって描き切っている。
一つ一つのアクションが時間を無数に分割し、読む者の時間意識を変容させる様は、ソルジェニーツィンの『イワン・デニーソヴィチの一日』を思い出させる(若者の鬱屈した感情を描くという観点では中上健次の『十九歳の地図』)。
リアルな描写が感覚に訴えると共に、愚かな行為が硬い文体によって表現されることによりユーモアを発する。
久しぶりに小説を読みながら笑った。