2005-09-01から1ヶ月間の記事一覧

毛沢東の書

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写真は毛沢東の書である。 鞭がしなるような独特の書体は狂草と呼ばれ、草書が発展したものだ。 これを物するためには荒ぶる筆の揺らぎを統御しなければならず、習得は難を極めるらしい。毛沢東の書を眺めていると、老子が残したエピソードを思い出す。 ある…

フーガの技法

描かれた絵画素材を一枚一枚撮影するという気の遠くなるような作業を経て驚くべきアブストラクトアニメーションが誕生した。闇の中に浮かぶ白い矩形が、バッハの「フーガの技法」に合わせて大きさが変わり、回転する。これが通奏低音の役割を果たす。その周…

「歴史の歴史」杉本博司展  

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歴史は過去を意味しない。時間の記録が原理的に不可能である限り、それは物質に刻まれた無数の出来事の断片を、現在性において再構成することでしか見えてこない。歴史家は、無時間的な闇に堆積した出来事の地層に、作為をもって介入し、個々の出来事に照射…

グローバリゼーションについて

資生堂ワードフライデイ*1。対話者は新元良一と池内恵。題はグローバリゼーションであったが、話は主に新元氏が池内氏にイスラム社会の特殊性について尋ねる形式で進められた。イスラム社会においては、神は絶対的な存在として書物(コーラン)を人間に下し…

ドッグヴィル

アメリカの閉ざされた貧しい村、「ドッグヴィル」に偶然一人の女(ニコール・キッドマン)が迷い込み、その女が引き金となって村が破滅するまでを追ったストーリー。舞台はスタジオの中空に架構され、家や道路が白線で示された一枚の床だけだ。9つに章立て…

小選挙区制というレミング

11日は午後から投票に出かけた。会場はいつになく長蛇の列が出来ていた。嫌な予感はしたが、蓋を開けてみれば殆どは自民党に投票しに来た人々であったようだ。小泉の郵政一本槍のメディア戦略の前では、自民・民主どちらが政権を取ったとしても憲法改正へと…

虫の声

夜道を歩いて家に近づくと、徐々に虫の音が聞こえてくる。遠くから緩やかな一定のリズムで鳴くものや、無数のごく短い響きでユニットを構成した音色を、金網を金属棒でこするようにばらまくもの、死にかけた蝉が地面に接したまま最後の羽ばたきを低く響かせ…

中平卓馬展 原点復帰-横浜

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副題を「原点復帰」と題されたこの展覧会は、近年主にジャーナリズムにおいて「再発見」され続けている中平卓馬の仕事の全体を非常にコンパクトにまとめており、なかば神話化されていた氏の作品を時系列的に確認することができる。中でも最も注目すべきはカ…

鬼塚良昭展

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日曜日に、中野の土日画廊で開催中の鬼塚良昭展-日々移ろう時空-を見に行った。鬼塚さんは、齢70になる宮崎在住の彫刻家だ。会場にいらっしゃった作家は年を重ねてますます意気軒高であり、頼もしい限りである。作品は素材に木材や石材を主に使っており、ど…

恐い、怖い、こわい展

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ブリヂストン美術館が所蔵する作品の中から「恐怖」をテーマとする46点で構成される展覧会。全体を3つのパートに分け、美術における恐さという問題をあぶりだす。「死と悪魔」(1)では、人間が死という最も原初的な恐れの感情に、いかに対処して来たか…